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1月2日・金曜日
恒例となりました冬合宿ですが、毎年1月1日に出発していたこの合宿、今年はいつもと違って 個人的に初詣に行きたいと言う子や、正月気分をあじわいたいと言う子などがいたため、日本の伝統行事も大事ですし、みんなの気持ちも考えて、今年は何年かぶりに2日出発ということになりました。
(今までの元旦出発、4日に帰寮というのは新学期までの余裕を考えて早めに出発していたのです)
当日は冬とは思えないほどの暖かさで、天候にも恵まれるなか、東は埼玉・栃木。西は奈良から子供たちが長田寮に集結し(送迎をされたご父兄さま・・ほんとうにご苦労様でした)外部生・寮生を合わせた総勢39名を乗せたバスは一路、長田の実家(岐阜県益田郡萩原町・下呂温泉の隣の町)を目指し出発しました。
バスに揺られること3時間半。無事に現地に到着しましたが、初日の課題はなんといっても実家の大そうじです。
昨年来何度も行われた"冬合宿ミーティング"で全員の掃除場所や係の担当が決っていたので、それぞれのチームリーダーから一斉に指示が出されました。
ところでご父兄のみなさんもご存知のとうり、実家の父も昭和3年3月3日3時ごろ生まれの、おん年76歳。足腰も弱くなり、掃除をするにしても身の回りが精一杯です。
まさに1年ぶりの掃除と言っても過言ではない状況のなか、夏合宿同様、掃除も訓練。機転と気配り、合理的な方法も大事ですし、先を読むことも必要です。そんな中、大変な大掃除が始まりました。
掃除が始まると寮生と外部生の差は一目瞭然でした。特に合宿初参加の子はボーッと立ったままとか、次何をしたらいいのか分からず指示されなければ動けなかったり、動いているけど要領が悪かったり、また、汚い雑巾でガラスを拭いたり・・・とあまりの動きと要領の悪さに危機感を覚えるスタートとなりました。
しかしながら・・・そのボーッと立ちすくんでしまった理由の1%は理解できます。それは・・・・ あまりの汚さに立ちすくんでしまったのでした。
1階に6畳の布団部屋がありますが、そこはまさしくネズミたちの天国になっており、そこらじゅうにパラパラとネズミのウ○コが(失礼)散乱していたのです。
掃除担当は女子。一人の女の子が私に駆け寄ってきました。「先生!先生!ネズミの森デ〜ス!」なんてかわいいことを言ってるんだろう・・と思い見に行った瞬間・・私もかたまりました。
ネズミのウ○コだらけではありませんか・・。しかし、この場でネズミごときに負けてはいられません。キャーとか、ワーッとか、感嘆の声?がハモルなかそうじが始まりました。
・・それでは次なる部屋を紹介しましょう。この部屋は6畳で太陽の光が差しこみ、とても暖かい部屋なのです。しかし 暖かいイコール生き物にとっても住みやすいわけで・・・今度のお客さんといえば・・・ナント・・ "クモ"です。
部屋じゅうにおびただしい数のクモの巣があり、クモの巣だらけなのです。運悪く これも女子の担当でした。感嘆の声のなか・・いや・・今から思えば叫びであったかもしれません。
掃除が始まりました。その子は近くに立てかけてあった、剣道の竹刀を持ちクモの巣取りを始めました。それは、さながらクモの巣わたがしを作っているようで、みるみるうちに竹刀の先にクモの巣がついていきました。
世にもめずらしい、プックラと膨らんだクモの巣わたがしを見る事ができた私たちは、幸せだったのか・・・不幸だったのか・・・いまだにわかりません。
ここまでくるとインディ・ジョーンズのハリソン・フォードになった気分です。子供たちと一緒になって"魔宮の伝説"次から次へと現れる亡者たちと戦ったのでした。(大げさですいません。失礼しました。)

<1月3日・土曜日>
前日の魔の大掃除も無事終わり、今日はいよいよスノボー初日です。 この冬合宿の目標は『スノボー達成・ジャンプ成功・精神鍛錬』ですが、6:00起床とともに一日はスタートしました。
あたりはまだ暗く、小雪が舞い散るなか準備が始まりましたが、この時リーダーの的確な指示もあり、わたしたちは予定通りバスに乗り込み、霊峰御岳のふもと"濁河(にごりご)スキー場"に向けて出発しました。
<同封しました写真にふたつの山並がありますが御岳山頂です> 3時間ほどわたしたちはバスに揺られ、ようやく濁河スキー場に到着しましたが、そこは澄みきった青い空、光輝く山々、樹氷、ダイヤモンドダスト・・・自然あふれるその光景は、目の醒めるような感動と美しさで一杯でした。
ゲレンデに降りたった私たちは、長田指導員チーム、長谷川指導員チーム、日下部指導員チームに分かれ、ミーティングの後さっそく練習が開始されましたが、経験者が初心者を指導する・・という流れのなか、早くも第一の難関です。
それは、ロープリフトです。聞き慣れない言葉だと思いますが はるか昔、ワイヤーにブーメランのような棒状の取ってが付き、乗る際にその取っ手を握り締めスキーの板を雪面につけ滑らせながら引っ張られて行く・・・といったリフトをご存じでしょうか?実はこの伝説のリフトがここ濁河スキー場に存在するのです。
もちろん私たちはスノボーですから、それはスキーより難易度は高く、しかも初心者の子はスノボーで滑れないのにも関わらず、ワイヤーは容赦なく引っ張っていきますから、しりもちの連続です。
しかし、練習を開始する為にはこのロープリフトに、山の斜面まで運んでもらわなくてはならないのです。何度も、何度も転びました。引っ張ってもらうどころか七転び八転び?!で、手袋はもうボロボロです。
それでもしばらくすると、ひとりまたひとり・・と、ようやくこの難しいリフトに乗れる子が増えてきました。 サァ!練習開始です。歩き方、滑り方、転び方・・・言葉で伝えてもなかなか上手くはできません。
スノボーの上達への近道はどんなことにも言えることですが、何度も何度もあきらめずに練習し体で覚えることです。
スノボーの第一段階は"木の葉"と言って、ボードのエッジ(ブレーキ)をきかせながら、木の葉のように左右に鋭角に滑り降りて行く方法と、第2段階は"ターン"と言ってテレビでもお馴染みの左右に大きくカーブしながら滑り降りる方法があります。
まったくの素人が2日間でターンまでできたら上出来です。ましてやジャンプまで出来てしまったら・・・実は今回の外部生の一部ですが過去の歴史を塗り替えました。
初日のお昼頃にはもうターンをしている外部生がいたのです。一人、二人・・とその数も増えていきました。それは外部生の運動神経もあると思いますがその影には寮生たちの一生懸命な指導があったからこそなのです。
寮生にとっても一年ぶりのスノボーです。滑りたくてしょうがなかったと思いますが、その気持ちを抑えての指導でした。そして、みんなどんどん上達していったのです。
午後3時・・・この時間は全員が集まり、今日練習した成果を木の葉、ターン、ジャンプに分かれて試す時です。試技は2回のみで指導員が○・△・×で判定します。
たとえ滑れなくとも一生懸命練習していたのであれば、判定は×ですがその努力を認めてあげて△にもなります。実はこの判定結果が先々いろんな面で天国と地獄の分かれ道となるのです。
まずひとつ目は夕食です。当日のメニューは飛騨地方特産のホルモンと、けいちゃん(鳥の味噌付け焼き)をジンギスカン鍋で焼きますが、七輪を使うので煙が発生します。
うまく滑ることが出来た子は、とても条件の良い場所でおいしくいただける訳ですが、かたや、×印 があった子は少々換気の悪い場所(奥の部屋で仏間:ご先祖様も、さぞや煙たかったことと思います) で食べますから、ゆっくりなどと食べてはいられません。
窓を全開にしても煙だらけ・・・過去にはゴーグル(スノボー用メガネ)をかけながら食べる子もおりました。
そして2つ目、強烈にコゲがこびりついたジンギスカン鍋を、きれいに洗う・・・というオマケが付いてきます。これが一番大変な作業でなかなか落ちません。
ここでも寮生と外部生の差がでました。その動きは掃除の時と同様で、寮生はもちろん手つきが良く早いのですが、外部生はダラダラと洗っている子が目立ちました。中には割り箸1本でこびり付いたコゲをおとそうと、軽くこすっているだけの子がいるのに驚きました。これでは朝になっても終わりません。
何故早く終わらせる為に、道具(ナイフやスプーンなどの硬い物)を使ったり、力を入れてこすったりしないのか・・・個人差はありますが、外部生の一部(合宿初参加の子)がこのひらめきの無さ機転、要領の悪さがあり、この状況に改めて考えさせられます。
寮生の入寮当時も外部生と一緒で指示をしなければ動けませんし、掃除も何の為にやっているのかわかっていない子もいました。
きれいにする為のそうじ・・・というこんなあたりまえの事がわかっていない子が殆どでしたが、日々の訓練と子供たちの努力が、動きもはやく、先をよみ、チームをまとめていくまでの子供に成長していくのです。・・・3日目の外部生の動きに期待しました。

<1月4日・日曜日>
この日のながれは1月3日とほぼ同じです。前日同様、木の葉・ターン・ジャンプのテストがゲレンデで3時からあり全員が挑戦しました。そして、その結果が同じ様に本日の夕食の場所とあとかた付けに影響します。
この日のメニューは焼肉だったので、昨夜同様けむりとコゲとの戦いです。外部生の中で連日このあとかたづけ組だった子がいましたが、ダラダラやれば自分が困る・・・と身をもって体感しているだけに、この日の手つきの早いこと、早いこと・・・昨日とは別人のようでした。 "失敗は成功のもと"まさにこの言葉につきます。
ところで次は、お風呂についてお伝えします。濁河スキー場から帰る途中に、小坂町というところがあります。ここに天然温泉"ひめしゃがの湯"がありここを利用しますが、お湯は鉄分を多く含んだ茶褐色のお湯で露天風呂付きです。
とてもいいお湯だけに優雅に入浴・・・と言いたいところですが、この時も訓練です。30分以内に入浴、そしてロビーに集合という課題が出されました。グズグズはしていられません。機敏な動きと、要領のよさ、そして先をよむ力が必要です。
数人遅れた子がいましたがまあ一応は全員クリアです。リーダーの点呼の後、宿泊先の萩原に向ったのでした。

<1月5日・月曜日>
さあ、平成16年の冬合宿も最終日です。疲れもピークに達し、あとひと踏ん張りといったところでしょうか。朝は暗いうちから初日同様、係に分かれ作業が始まりました。
レンタルした布団の積み下ろしや、昼食を作る係や食器を洗ったり、かた付けたり、生ゴミは裏の畑に持って行き土に返します、それ以外は名古屋に持ち帰り・・・そして、またそうじ・・・。
最終日のメインイベントは、なんといっても餅つき大会です。準備は掃除をしながら同時進行しました。(餅係はこの日のために、2日前から餅米を洗い水に浸していました)充分に水を吸ったお米をザルにあげ、蒸し器に布を敷いたあと、餅米を入れます。
3升づつ入った蒸し器が2つ用意され いよいよ点火と言いたい所ですが次は薪割りをしなければいけません。燃料作りです。
子供達は倉庫から斧を持ってきて薪割りを始めました。この薪は今ではめずらしい"くど"で燃します。この"くど"ですが、実はいろいろと調整が難しいのです。まず火がつきません。
火がついたとしても薪を投げ込むタイミングや風の調整、蒸し加減、と火力もありますが、センスと機転を必要とするこの一瞬一瞬が、おいしいお餅を作る上で重要なカギとなるのです。
子供たちも火力を維持したり、薪割りをしたりの悪戦苦闘です。しかし、この大変な場も寮生の仕事組が昨年の教訓をもとに上手に後輩を指導してくれました。そして、無事餅つき大会が始まったのです。
初日から"うす"に水をはり充分にアク抜きした中にアツアツに蒸し上がった餅米が入りました。蒸気がもうもうと立ちのぼる中、ペッタン、ペッタンと餅つき開始です。うら返し係は外部生と仕事組が引き受けました。
相当な熱さでお餅を返す手もすぐに真っ赤です。ペッタン・・ペッタン・・実はこれがけっこう難しく、力をこめて "うす"の真ん中に杵をおろすのは大変で、相当な集中力と勘が必要なのです。
案のじょう"うす"のふちを叩く子が続出でした。おかげで木のフレークチップ入り!食物繊維入りの、ちょっと茶色な ヘルシーお餅の出来上がりです。(嬉しいような・・・悲しいような・・・)
見た目は悪いですが みんなで力を合わせて作ったお餅です。あんこ、きなこ、甘醤油、納豆のトッピングも揃ってとてもおいしく頂きました。そして、新年恒例の餅つき大会も無事終わり、一路名古屋に向かったのでした。

平成16年冬合宿を振り返ってみますと、リーダーが中心となり寮生、外部生に的確な指示を送り また、子供達も一生懸命その指示に従うために努力していたと思います。
外部生がダラダラやっていた掃除も手つきが変わりました。その影には「こうやってやるんだよ」と教えてくれた寮生がいました。そして何時間も洗い続けるわけですから、「冷たい水ではかわいそう・・」と何回も大きなやかんでお湯を沸かし持って来てくれた寮生がいました。
それから、今回の合宿の目標は"スノボー上達・ジャンプ成功・精神鍛錬"でしたが、外部生の中には、たった2日間でターンまで出来てしまった子が何人もいました。そしてジャンプまで成功した子がいます。
これもやはり寮生の支えがなければ実現しませんでした。また寮生にとっても、外部生を叱咤激励することで、自分自身にとってもプラスになったことと思います。
こうして、ご父兄さまのご理解とお力添えのおかげをもちまして、平成16年の冬合宿も無事終わりました。にんげん一人じゃ生きていけない・・・ってよく言いますが、今回の合宿は人と人との出会いがすばらしい舞台となり、共に成長することができたのではないかと思いました。
正直に言って課題を残した子もいますが、失敗は財産です。次へのステップとしてプラスに転じてくれることを信じていますし、応援していきたいと思います。
これからもスタッフ一同、子供達の輝かしい未来のためにより一層の努力をしていかなければならない、と新年を向かえて決意を新たにいたしました。
今後も" 世のため、人のため、子供達のため "にすばらしい舞台作りを1回でも多く子供達に提供できたら・・・と思っております。 今年もどうぞよろしくお願い申しあげます。

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